米国科学財団(National Science Foundation:NSF)傘下の米国科学工学統計センター(National Center for Science and Engineering Statistics:NCSES)は1月30日、STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)分野における雇用・教育における多様性の傾向に関する連邦政府による最新且つ全面的な分析結果をまとめた報告書「多様性とSTEM分野:2023年女性・マイノリティ・障害者(Diversity and STEM: Women, Minorities, and Persons with Disabilities 2023)」を発表した。本報告書では、過去10年間で、女性及び黒人・ヒスパニック系・米国先住民・アラスカ先住民のSTEM分野での就労者及び学位取得者数が増加しているものの、これらのグループが米国民の人口に占める全体の割合と比較すると、STEM分野ではまだ少数派であるとしている。なお、2023年版の同報告書は、STEM関連職をより幅広くとらえ、学士号保有が要件とされない職種についても調査対象としている。主な結果は以下の通り。

  • STEM分野修了者・学位取得者共に、過去10年間で女性及びヒスパニック系の増加が顕著。但し、コンピュータ・数理科学、生物科学、物理科学・工学分野で就労する学位保有の女性の数は、社会科学分野と比較すると少数であるなど、分野によって格差あり。
  • 学位保有が要件ではないSTEM関連職の就労者の約3分の1はマイノリティである一方で、これらの職種はSTEM関連職の中で給与が最低且つ失業率が最高。
  • STEM分野の学士号保有者の50%と準学士号保有者の49%は女性であるのに対し、STEM関連職就労者全体に占める割合は35%で、給与も男性より低い傾向。
  • ヒスパニック系・黒人・米国先住民・アラスカ先住民は合わせると、米国人口の31%を占めるのに対し、2021年にSTEM関連職就労者全体に占めた割合は24%のみ。また、これらの人種・民族グループは白人・アジア系のSTEM関連職就労者と比較すると平均給与が低い傾向。
  • ヒスパニック系STEM関連職就労者全体の63%は学士号保有を要件としない職に就き、これらの職に就く者全体の24%がヒスパニック系労働者。
  • STEM関連職に就く黒人及びヒスパニック系労働者の失業率はそれぞれ6%と5.7%であったのに対し、白人及びアジア系労働者ではそれぞれ2.9%と2.3%。
  • 2021年に就労していた1つ以上の障害を持つ労働者のうち、21%はSTEM関連分野で就労。但し、STEM関連職就労者全体の中で障害者が占める割合は約3%。また、2021年の科学・工学関連博士号取得者のうち、1つ以上の障害を持つ者は全体の11%。

 

なお、本報告書は、<https://ncses.nsf.gov/pubs/nsf23315/>からダウンロード可能。

 

National Science Foundation, NSF’s NCSES releases report on diversity trends in STEM workforce and education

https://beta.nsf.gov/news/diversity-and-stem-2023